このページでは猫でよくみられる症状と、症状から考えられる代表的な病気について解説しています。
ネコちゃんは調子が悪くてもそれを隠すことが多く、特に病院に来るとその傾向が強いです。そのため、飼い主さんが何かしらの症状に気づかれたときには、病気がすでに進行してしまっていることもあります。大切な愛猫の健康を守るために、日頃から様子をよく観察していただき、動物病院でご自宅での様子をお教えください。以下のような症状に気づいたら、病気のサインかも・・・
腎機能や肝機能が低下すると、体内の老廃物がうまく処理できなくなり、食欲不振や吐き気、元気消失などの症状を引き起こしますが、初期は無症状なことも多いです。重症化すると水分摂取量や尿量が増える(多飲多尿)、体重減少、黄疸(肝臓病)などの症状が見られることがあります。血液検査やエコー検査、尿検査などで腎臓や肝臓の状態を知ることができます。
口の中の痛みや違和感があると、食べたい気持ちがあっても食事ができなくなります。口内炎や進行した歯周病、吸収病巣は歯肉の炎症や痛みを引き起こします。食欲が落ちる以外にも、口臭やよだれが増えることもあります。全身麻酔下での歯科検査や歯科処置、時に内科治療を行うことがあります。
胃腸炎、膵炎といった消化器系の疾患では、食欲低下以外にも嘔吐、下痢、腹痛などの症状を伴うことが多いです。食欲不振や嘔吐・下痢が続くと、脱水、電解質異常、低血糖などが起き命にかかわる場合があります。血液検査、エコー検査、糞便検査などを行い、輸液療法や投薬による治療を行います。重症の場合には入院することもあります。
回虫やコクシジウムなどの寄生虫、サルモネラやカンピロバクターなどの細菌、あるいは猫パルボウイルス(猫汎白血球減少症)などのウイルス感染が原因となります。特に子猫で重症化しやすいです。猫パルボウイルスでは激しい血様下痢と嘔吐が見られ、命に関わります。糞便検査で病原体を特定し、駆虫薬や抗生剤などで治療します。
特定の食材(タンパク質など)に対して免疫が過剰に反応するアレルギーや、消化できない成分があることによる不耐症が原因で慢性的な下痢が起こります。嘔吐や皮膚のかゆみを伴うこともあります。診断には、原因となる食材を厳密に除去する除去食試験を行います。治療のためにアレルゲンを含まない療法食や、低脂肪食への切り替えます。
免疫系の異常により、消化管(主に腸)に慢性的な炎症細胞の浸潤が起こる病気です。長期にわたる慢性的な下痢や嘔吐、体重減少が特徴で、一般的な治療薬ではなかなか改善しません。下痢の性状は様々ですが、粘液便や血便を伴うこともあります。他の疾患を除外した後、内視鏡による生検で確定診断し、食事療法や免疫抑制剤などで管理します。
膵臓から出た消化酵素が周囲の臓器を刺激することで、激しい嘔吐と腹痛が起こります。その他に食欲不振や元気がなくぐったりする、下痢をすることなどがあります。血液検査(猫膵特異的リパーゼなど)や超音波検査などで診断し、吐き気止めや抗炎症剤、輸液などによる集中治療を行います。症状を繰り返す慢性膵炎では、糖尿病など他の疾患が続発することがあります。
猫が毛づくろいで飲み込んだ毛が胃の中に溜まり、胃腸を塞いだり刺激したりすることで嘔吐が起こります。長毛の猫でリスクが高いです。嘔吐や便の中に毛玉が混じったり、重症になると何度も嘔吐を繰り返します。予防や軽症の治療では、毛玉ケアフードやサプリメント、こまめなブラッシング、サマーカットなどを行います。腸閉塞を起こした場合には外科手術を行うこともあります。
おもちゃや紐、ビニールなどを飲み込んだ際に、それが胃や腸に詰まったり、粘膜を刺激したりすることで、嘔吐が起こります。消化管閉塞を起こすと、食べたものが全て吐き戻され、食欲不振や腹痛を伴います。レントゲン検査や超音波検査で異物の有無と場所を確認し、内視鏡または外科手術で摘出する治療が必要です。重症になると胃腸に穴があいたり(穿孔)、壊死を起こすことがあります。
アレルギー反応により気管支が炎症を起こし、狭くなることで咳が出ます。おもに、頭を低くして苦しそうにするような発作的な咳や呼吸困難が見られます。レントゲン検査で肺の状態を確認し、炎症を抑えるステロイドや気管支を広げる内服薬や吸入薬を用いて治療や維持管理を行います。
感染症、刺激物の吸入などにより気管支が持続的に炎症を起こし、粘液が増えて気道を刺激することで咳が出ます。おもに慢性的な咳が続き、進行すると呼吸が速くなることがあります。レントゲン検査で気管支の壁が厚くなっていないかを確認し、炎症を抑える薬や、痰を出しやすくする薬などで症状の改善を目指します。
心筋症などにより心臓の機能が低下し、肺に水分が溜まる肺水腫になると、刺激で咳が出ます。おもに咳とともに呼吸が速くなる、食欲不振、元気がないなどの症状が見られます。レントゲン検査や心臓超音波検査で診断し、利尿剤で肺の水を減らしたり、強心剤などで心臓の働きを助ける治療を行います。
腎臓の機能が徐々に低下すると、尿を濃縮する能力が失われるため、薄い尿を大量に出し(多尿)、その結果として喉が渇き水を多く飲みます(多飲)。重症化すると食欲不振、嘔吐、体重減少を伴います。血液検査、エコー検査、尿検査で腎臓の状態を把握し、食事療法、内服薬、サプリメント、輸液療法などで症状の改善や維持治療を行います。
インスリンの作用不足で血糖値が高い状態が続くと、尿中に大量の糖が漏れ出ます。この糖が水分を一緒に引っ張り出すため多尿となり、脱水を補おうとして多飲になります。おもに食欲はあっても痩せていきます。血液検査や尿検査で診断し、インスリン注射や食事療法で血糖値を管理する治療を行います。
この病気では様々な理由で甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで、代謝や交感神経の働きが過剰に高まります。多飲多尿以外に、食欲があるにも関わらず体重が減る、興奮しやすい、落ち着かない、食欲の増加、嘔吐、暑がりなどの症状があります。血液検査(甲状腺ホルモン検査)やエコーなどの画像検査で甲状腺の状態を把握し、内服薬や食事療法、手術などで治療をします。
ノミやダニが皮膚に寄生し、アレルギー反応(ノミアレルギー性皮膚炎など)などにより痒みを引き起こします。おもに、体を過剰に舐める、噛む、引っ掻くといった行動が見られます。ノミの糞が確認されることもあります。皮膚検査で寄生虫の有無を確認する、あるいは試験的にノミダニ予防薬を投与することで診断し、治療と予防の両方の目的でノミダニ予防薬を使用します。
特定の食べ物に対して免疫が過剰に反応し、皮膚に痒みと炎症を起こす病気です。おもに、顔や首にしつこい痒みが見られ、掻きすぎて皮膚が赤くなったり傷になったりします。診断には、原因食材を除いた除去食試験を行い、症状が改善すれば食物アレルギーと判断します。治療は原因となる食材を避ける食事療法が中心です。
環境中のアレルゲン(花粉、ハウスダストなど)を吸い込んだり触れたりすることで、皮膚に炎症と痒みが生じる病気です。おもに、顔、耳、お腹、膝の裏などに痒み、脱毛、赤み、できもの、湿疹などが見られることがあります。他の原因を除外後にアレルギー検査を行うことがあり、内服薬や外用薬で痒みをコントロールする治療が主体となります。
免疫に関わる肥満細胞が腫瘍化する悪性腫瘍です。毛が無いできものや赤っぽいしこりとしてみつかることがあり、長期間かけてゆっくり大きくなったり、全身に多発したり、様々な場合があります。病変を触ると赤くなったり、一時的に腫れたりする場合があります。主に細胞診で診断し、転移を防ぐため、早期に外科手術で切除することが推奨されます。進行度によっては化学療法も行われます。
皮膚の表面の細胞から発生する悪性腫瘍です。日光によく当たる耳の先端や鼻、まぶたなどに、ただれたり、かさぶたになったりする治りにくい病変として現れます。進行すると潰瘍化します。生検(組織の一部を採取)で確定診断し、外科手術や放射線療法が主な治療法となります。
皮脂腺から発生する良性の腫瘍です。皮膚からわずかに盛り上がった、小さく硬いしこりとして触れ、通常は痛みはありません。高齢の猫に見られ、複数できることや、やぶけて炎症を起こすことがあります。細胞診や切除生検により診断します。良性腫瘍であるため、治療は外科的に切除するのみで問題ありませんが、別の場所に新たにできることもあります。
猫ヘルペスウイルスや猫カリシウイルス、クラミジアなどの感染で、結膜や角膜に炎症が起こります。おもな症状は、結膜の腫れや充血、目やに、涙、くしゃみや鼻水などです。症状と綿棒で粘膜を拭う検査で原因を調べ、主に点眼薬や内服薬で治療します。
涙を排出する鼻涙管(びるいかん)が詰まったり、眼の周りの構造に問題があったりして、涙が目の外にあふれ出る状態です。涙が常に流れるため、目の下が濡れて赤茶色に変色する(涙やけ)、透明~黒っぽい目やにが出る、皮膚炎を起こすなどの症状があります。原因に応じた処置を検討しますが、日々のケアにより涙やけや皮膚炎を予防するのみにとどまることも多いです。
外傷や異物などが原因で、目の表面の角膜に傷が入った状態のことです。おもな症状は、目の痛み(目を細める)や充血、目やにです。傷が深い場合や、最近感染が生じた場合には角膜が白く濁り、眼球破裂の危険が高まります。特殊な染色検査で傷を確認し、点眼薬や内服薬で治療します。手術が必要になることもあります。
脳自体に問題があり痙攣が起こる状態です。(特発性)てんかん、脳腫瘍、脳炎、頭部外傷などの病気により起こる症状です。おもに意識を失って全身を突っ張らせたりバタつかせたりする発作が見られますが、体の一部だけに出るてんかん発作もあります。診断のためにはMRI検査(紹介になります)が重要です。治療は抗てんかん薬で発作を抑えることや、原因疾患に応じた治療を行います。
血液中のブドウ糖が異常に少なくなる状態で、脳のエネルギーが不足して痙攣が起こります。仔猫や痩せた猫で嘔吐下痢を繰り返し栄養失調になった場合や、糖尿病の治療中にインスリンが効きすぎた場合などに生じます。痙攣のほかにぐったりすることもあります。血液検査で血糖値を確認し、糖分を点滴や口から補給する治療を行うととともに、低血糖を起こす原因となる病気の治療を行います。
不整脈などにより、一時的に脳への血流が極端に不足することで、短時間の失神(倒れる)や、痙攣に似た発作が起こります。おもに運動や興奮の後にふらつきや虚脱が見られます。心エコー、心電図、血圧測定、レントゲン検査、血液の心臓マーカーなどで心臓の状態を確認し、心臓病の薬で血流を改善することで発作を予防します。
ミミヒゼンダニという小さな寄生虫が耳の中に感染して起こります。感染力が強く猫同士でうつることがあります。おもに激しい痒みと、黒くてカサカサした耳あかが大量に出ることが特徴です。耳あか検査やオトスコープでダニを確認し、特定のノミダニ予防薬や点耳薬などで治療します。
耳の穴(外耳道)に炎症が起こる病気です。アレルギー、たれ耳、できもの、過剰な耳あかの分泌などが原因で外耳道内に耳あかがたまり、常在菌のマラセチアや細菌が異常に増殖します。耳の痒みや赤みも見られます。オトスコープや耳あか検査を行い、点耳薬や内服薬で治療します。
皮膚の表面の細胞から発生する悪性腫瘍です。耳の先端で発生しやすく、初期は赤み、ただれ、かさぶたなど外耳炎のように見えることもありますが、進行すると腫れたり、潰瘍化します。生検(組織の一部を採取)で確定診断し、外科手術や放射線療法が主な治療法となります。
最も多い口臭の原因で、プラークによって歯肉に炎症が起こり、歯の周りの組織が破壊される病気です。初期の歯肉炎では歯肉が赤くなる、腫れる、出血しやすくなることがあります。進行すると歯周炎となり、歯肉や顎の骨が下がり、膿がたまったり、歯が抜けたりします。全身麻酔下での歯周検査で診断し、歯石除去(スケーリング)や、毎日の歯磨きで治療・予防します。
歯肉や口の粘膜に炎症が広がり、激しい痛みを伴う病気です。痛みで食事ができず、よだれや口臭が強くなります。原因はわかっていませんが、ウイルス感染が関わることがあります。内科治療はスケーリング、ホームケア、抗炎症剤や免疫抑制剤の内服などを行いますが、多くの猫では前臼歯抜歯や全顎抜歯が必要になります。
腎臓の機能低下により、本来排出されるはずの老廃物(尿毒素)が体内に溜まり、アンモニアのような強い口臭を生じます。おもに口臭のほかに、嘔吐、多飲多尿、食欲不振が見られます。
心臓病(主に心筋症)が重症化し、肺に水が溜まる緊急性の高い状態です。酸素交換がうまくできないため呼吸が速く、開口呼吸やぐったりする症状が見られます。レントゲン検査やエコー検査で診断し、酸素吸入や薬剤投与で治療を行います。
胸郭内(肺の外側)に血液や液体が溜まり、肺が圧迫されて十分に膨らめなくなる状態です。胸とお腹を大きく動かして呼吸する、舌が青紫色になる(チアノーゼ)など呼吸困難の症状が見られます。レントゲン検査やエコー検査で診断し、胸水を抜く処置や、原因に応じて薬剤投与や外科手術などで治療します。
胸の中で肺、リンパ節、胸腺などに腫瘍(乳腺癌の転移など)ができ、それが肺や気道を圧迫することで呼吸が苦しくなる状態です。徐々に進行する呼吸困難、咳、体重減少が見られます。レントゲン検査やCT検査で腫瘍の大きさや場所を診断し、外科手術や抗癌治療などを検討します。
1年間で人間の4〜5倍ものスピードで歳をとるネコちゃん。
元気そうに見えても、なにか病気が隠れているかもしれません。
飼い主様との楽しい時間を少しでも長く過ごしてもらうために、健康診断とセルフチェックで病気の早期発見、早期治療に繋げましょう。
¥5,500
項目が少ない血液検査のみのコースです。
仔猫の初めての検査、感染症検査のついでなどで、軽い健康診断として血液検査のみ希望される場合にお勧めいたします。
成猫には検査項目の多い血液検査のみのシニアコースもあります。
¥14,300
Team HOPE健康診断の7項目を含めた、簡易的な全身検査の健康診断です。
エコーなど長時間の検査が苦手なネコちゃんにお勧めです。
※比較的若いネコちゃんでも発症することがある、心筋症や尿路結石などの検査としては不十分です。
¥18,700
全身検査の健康診断です。
一通りの検査を希望されるネコちゃんにお勧めです。